島の文化を、未来へ結ぶ。
町田酒造株式会社
平成三年(一九九一年)、清冽な水に恵まれた奄美大島の龍郷町に醸造所を構えてから、町田酒造は三十五年の歳月を歩んでまいりました。奄美の島々で育まれた黒糖焼酎の文化を、より多くの方々のもとへ届けるために重ねてきた、ささやかな日々の積み重ね。
この節目の年に、私たちは新たな一本を世に送り出します。商品名は『結来(ゆらい)』。
“ゆらい”とは、奄美のことばで「寄り合う」「集まる」を意味します。肩を寄せ合い、語らい、ともに歩んでゆく――そんな島の暮らしに息づく、温かなことばです。
奄美の自然、奄美の伝統、そしてこの島に生きる人。島を形づくるすべてのいのちが、この一本のもとに“ゆらい”、やがて未来へとつながってゆきますように――。そんな祈りを、二文字に託しました。
『結来』第一弾のラベルを飾るのは、奄美大島にのみ自生するツツジ科の常緑小高木、アマミセイシカ(奄美聖紫花)。
三月下旬から四月の中頃、山深い渓流沿いの岩場にひっそりと咲く、世にも稀な花です。蕾のころは淡紅色をまとい、咲き進むにつれて透き通るような純白へと姿を変える。花びらの内側上部に散る、淡い黄緑色の小さな斑点が何よりの特徴です。
その名は“聖なる紫の花”を意味し、神や精霊の宿る森の象徴として、古くから島人に畏敬の念を抱かせてきました。今では環境省レッドリストの絶滅危惧IB類(EN)、鹿児島県の指定希少野生動植物にも数えられ、人の目に触れること自体が幸運とされる――まさしく『幻の花』と呼ぶにふさわしい存在です。
奄美に確かに息づきながら、知る人ぞ知る島の宝。その姿をラベルに記すことが、島の文化を発信するという『結来』の使命の、最初の一歩となりました。
渓流沿いの岩場と、手つかずの常緑広葉樹林。わずかひと月ばかりの花期に、白い花が森の奥でひそやかに揺れる。出会えること自体が、ささやかな幸運とされてきました。
奄美の黒糖焼酎は、その風土ゆえに、伝統的に黒麹や白麹で仕込まれてまいりました。温暖な気候のもとで仕込みの安定を保つために積み重ねられてきた、先人たちの知恵です。
しかし『結来』の酒質のベースに用いたのは、清酒造りに古くから用いられ、香りに繊細な彩りをもたらすことで知られる黄麹。蒸留には、原料の風味を余すところなく抽出する常圧蒸留を選びました。
低温で軽快に仕上げる減圧蒸留をいち早く奄美に導入した町田酒造が、あえて時計の針を遡り、原料と真正面から向き合うこの仕込みを選んだ理由。それは、黄麹の繊細さと黒麹の無骨さをブレンドすることで生み出される、黒糖がもたらす芳醇な甘い香り。グラスに注いだ瞬間、これまで誰も出会ったことのない黒糖焼酎の表情が立ち現れます。
杯を傾けると、まず立ちのぼるのは、黄麹がもたらす華やかでフルーティーな含み香。そこへ、黒麹無濾過の力強い香味が重なり、黒糖の芳醇な甘い香りが層をなして広がります。
口に含めば、長き熟成が角を丸めた、まろやかでなめらかな味わい。喉を過ぎたあとには、ほのかな黒糖の余韻と、心地よい静かな甘み。
【結来】は、町田酒造の酒造りのイメージを、もう一度描き直すための新たな一献です。
黄麹ベースの原酒がもたらす華やかな香りに、黒麹無ろ過ならではの濃厚な含み香が重なる、二層の深い余韻。
長期熟成が角を削り、まろやかでなめらか。確かな深みが舌の奥に広がる。
ほのかな黒糖の甘さが、心地よく静かに残る、長くやさしいフィニッシュ。
『結来』には、黄麹常圧蒸留ベースの原酒に黒麹仕込みの無濾過原酒をブレンドしています。
お湯割りにすると、無ろ過由来の旨味成分(油分)がふくよかに解け、黒糖本来のコクと旨味がじんわりと広がります。ロックでは、酒質本来の力強い表情がくっきりと浮かび上がります。
その日の気分、その日の食卓に寄り添って、表情を変える一本。ぜひさまざまな飲み方で、香りの移ろいをお愉しみください。
黄麹由来の華やかな香気が前へ、濃醇な味わいを体感。
黒麹無濾過由来の油分がお湯割りで溶け合い、ふくよかな香りを体感。
長期熟成のまろやかさをそのままに。
可憐に咲くアマミセイシカと、春の奄美大島の明るい色合い。
ラベルにあしらった淡い花々は、島の自然そのものの姿です。
流れるような筆致で描かれた「結来」の二文字は、島から島へ、人から人へ――糸のように縁をつないでゆくわたしたちの想いを、しなやかな曲線に託しました。
三十五年の節目に届ける、ささやかな祈りの一本です。
奄美の自然が育んだ、幻の花。
島が紡いできた、黒糖焼酎づくり。
その営みを受け継ぐ、蔵人たち。
町田酒造が三十五周年を機にお届けする『結来』は、そのささやかな祈りの結晶です。